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甘いものはなぜ太りやすいのか?グルコース代謝とフルクトース代謝の違いから考える

医学生向け

「甘いものは太る」ということは皆なんとなく知っていると思うが、本当に甘いものは太りやすいのか?また、それが事実だとしたら、それはなぜなのか? 

ここではそんな疑問に、生化学の知識で答えます。

糖質とはなにか 

糖質:食事に含まれる主要なエネルギー源。体のエネルギー貯蔵形態であり、細胞間コミュニケーションを媒介する細胞膜成分でもあるなど、非常に多彩な機能を果たす。

糖質の最小単位である「単糖」には、グルコースフルクトース、ガラクトースといったものがあり、糖質は消化されてこの「単糖」となってから小腸の細胞から吸収される。

  • グルコース(ブドウ糖)…自然界で最も多い単糖
  • フルクトース(果糖)…多くの果物、はちみつ、多くの食品の甘味料、ソフトドリンクに多く含まれる。

「単糖」が結合して、二糖・オリゴ糖(3個〜10個程度の単糖からなる)多糖(10個以上の単糖からなる)を形成する。

二糖の例

  • スクロース(ショ糖) グルコースフルクトース…砂糖
  • マルトース(麦芽糖) グルコースグルコース…種、大麦、とうもろこし

多糖の例

  • グリコーゲン(グルコースの重合体)
  • デンプン(グルコースの重合体)     

ここまで見てわかるように、

甘い食べ物には、スクロース(グルコース+フルクトース)とフルクトースが多く含まれている!

グルコースとフルクトースの代謝経路の違い

グルコースとフルクトースの細胞内への輸送の違い

グルコースの細胞内への輸送…インスリン(血糖値を下げるホルモン)依存性

フルクトースの細胞内への輸送…インスリン非依存性

体内のグルコース濃度が高くなると、血糖値を下げようとインスリンが分泌される。

インスリンによって、グルコースを細胞内に輸送するたんぱく質の一つである「GLUT-4」の細胞内部から細胞膜への移動が促進され、グルコースの取り込みが高まる。

このようにしてインスリン依存性にグルコースを細胞内に輸送している。

フルクトースはインスリンの分泌を促進せず、インスリンの濃度にかかわらず細胞内に輸送される。

グルコースがピルビン酸になるまでの経路(解糖系)

グルコースの代謝経路の一部である解糖系の最終産物は、ピルビン酸である。

ここで「解糖系」について、おおまかに説明する。の図を見ながら読むと良いだろう。

解糖系(グルコースがピルビン酸になるまでの経路)

グルコースは、「ヘキソナーゼ」という酵素の働きでリン酸化され、グルコース6-リン酸になる。(今後反応を触媒する酵素の名前を緑字で書く)

ヘキソナーゼは、ほとんどの組織に存在し、グルコースに対して高い親和性を持ち、最大速度は低い。

したがって、組織のグルコース濃度が低くても、細胞内にグルコースが効率的に取り込まれる。また、細胞が利用できる以上の糖が次の段階に進むことはない。

ちなみに、肝細胞や膵臓のβ細胞に存在する「グルコキナーゼ」という酵素も、グルコースをリン酸化してグルコース6-リン酸のするが、グルコースに対する親和性が低く、最大速度が高い。

つまり、肝細胞や膵臓β細胞においては、食後の高血糖時など、グルコース濃度が上昇した時にのみグルコースが取り込まれる。また、大量のグルコースを取り込むことができ、これによって体内にまわるグルコースを最小に抑え、食後高血糖を最小限にする。

その後、グルコース6-リン酸はフルクトース6-リン酸となり、フルクトース6-リン酸は「ホスホフルクトキナーゼ(PFK-1)」の働きでフルクトース1,6-ビスリン酸となる。

その後の反応についての説明はここではあまり重要でないので省略する。

解糖系の調節メカニズム

解糖系の速度を決定する調節メカニズムはいくつかあるが、「ホスホフルクトキナーゼ」によって触媒(促進)される反応は、解糖系で最も重要な調節ポイントである。

ホスホフルクトキナーゼを調節するもの(働きを活性化したり、邪魔したりするもの)は以下のようなものがある。

①ホスホフルクトキナーゼが触媒する反応の基質である、ATPとフルクトース6-リン酸の濃度

反応前の物質を「材料」、酵素(ホスホフルクトキナーゼ)を「作業道具」、完成品をいれる箱を「最大速度」だとすると、どれだけ「道具」がそろっていても「材料」がなければ何も作れないということ!逆に材料があれば、作ったものが「箱」に入る限りは作ることができる!

②細胞内エネルギーレベルによる調節

エネルギーである「ATP」や、ATPを合成するクエン酸回路の中間体である「クエン酸」は、ホスホフルクトキナーゼを阻害する。

逆に、「ADP」によって活性化される。(ADPにリン酸が結合(高エネルギーリン酸結合)するとATPになる。エネルギーが使われるとATPはADPの形に戻る)

グルコースが解糖系の後、さらにクエン酸回路と電子伝達系を経て代謝されると、人間がいろんなことに使うエネルギーであるATPが作られる。エネルギーが十分あったら、エネルギーを作る反応を止めるし、足りなかったら(この時ADPが増えている)エネルギーを作るんだ!

③フルクトース2,6-ビスリン酸による調節

フルクトース2,6-ビスリン酸は、ホスホフルクトキナーゼを強く活性化させる。

フルクトース2,6-ビスリン酸は、ホスホフルクトキナーゼ(PFK-1)とは異なる「ホスホフルクトキナーゼ2(PFK-2)によって、フルクトース6-リン酸から作られる。

フルクトース2,6-ビスリン酸は、フルクトース1,6-ビスホスファターゼを阻害し、解糖系と逆の方向に向かう反応を阻害する。解糖系と逆向きの反応をたどる経路は、「糖新生」に関わっている。

空腹時には、インスリン(血糖値を下げようとするホルモン)濃度が低下し、グルカゴン(血糖値をあげようとするホルモン)濃度が低下するよね。

そうすると、活性型だったPFK-2がリン酸化されることで不活性型になって、働かなくなる。だから、肝細胞内のフルクトース2,6-ビスリン酸濃度は低下するんだ!

フルクトース2,6-ビスリン酸はPFK-1を活性化して解糖系を促進して、その逆向きの反応を阻害する酵素だけど、フルクトース2,6-ビスリン酸が少ない時には、その作用が弱くなるよね!

こうして、空腹時には解糖系の速度は低下して、糖新生の速度が上がるんだ!

満腹時には、空腹時と逆で、インスリン濃度が上昇、グルカゴン濃度が低下する。

そうすると、PFK-2をリン酸化する酵素のPKA(プロテインキナーゼA)活性が減少して、PFK-2の脱リン酸化(リン酸化の逆の反応)が進むんだ。

脱リン酸化されて活性型になったPFK-2の働きで、フルクトース2,6-ビスリン酸の濃度が上がって、解糖系の速度は上昇するよ!

グルコース代謝とフルクトース代謝の違い

この図を見てもわかるように、フルクトースは、フルクトースと親和性の高い「フルクトキナーゼ」(肝臓、腎臓、小腸管粘膜に存在)によって他の物質になって、グルコースとは異なる経路でピルビン酸になる。

フルクトースをリン酸化する酵素は、フルクトキナーゼの他にヘキソキナーゼもある。これはグルコースの解糖系で出てきたね!

ヘキソキナーゼは体のほとんどの組織でグルコースをリン酸化するけど、フルクトースに対しての親和性は低くて(あまり働かない)、最大速度は高い。

だから、細胞内のフルクトース濃度が異常に高くならない限り、ヘキソナーゼによるフルクトースのリン酸化はほとんど起こらないんだね。

フルクトースの代謝では、解糖系における最も重要な調節ポイントであるはずの、ホスホフルクトキナーゼ(PFK-1)に触媒される反応は迂回される。

このような理由から、フルクトース代謝はの速度は、グルコースの代謝速度と比べるとずっと速く、必要なATPの産生に必要な量よりも多くのピルビン酸やアセチルCoAを産生する。

その結果、脂質合成が促進されるため、肥満となるのである。

以上の理由から、「甘いものを食べると太る」ということが言えるだろう。

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